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Velvet
Couture

ベルベット クチュール

見事な職人技がファッションのさまざまな時代を結びつけることで誕生した、2025-2026年秋冬 コレクションのルック。本コレクションは、新たなエレガンスのビジョンを体現した革新的なテキスタイルを次々と披露しました。その一例である、卓越した素材ベルベット ジャカードに光を当てます。

ウィメンズ クリエイティブ ディレクターのマリア・グラツィア・キウリにとって、ファッション ショーは、衣服を通じて新たな表現形態を探求し、変容と自己肯定の媒体としての衣服の役割を問い直す機会。2025-2026年秋冬 コレクションで、彼女は、ファッション史との多面的な対話を通じて、ディオールのヘリテージに宿る記憶や意図を探求しました。細部まで丁寧にデザインされたルックは、各時代のコードやシンボルを反映し、時の流れを物語ります。過去、現在、そして未来の間を行き来する可能性のレパートリーへと変貌を遂げたコンテンポラリーなワードローブを表現しました。

シャツは透け感を重視し、超構造的なコートは身体の曲線にぴったりとフィット。ショルダーは丸みを帯び、襟は取り外し可能に。さらに、メンズのジャケットとフェミニンなビスチェを組み合わせるなど、コントラストと大胆さが交錯する中、一つひとつのルックが卓越した唯一無二のサヴォワールフェールを披露し、クチュールの限界を再定義しました。

卓越した伝統と革新の融合により誕生した本コレクションのファブリックは、素材の本質そのものを再定義しています。メタリック ジャカード、オールオーバー刺繍、再解釈されたレースやギピュール、そしてベルベット ジャカード…… これらの多様なスタイルのファブリックは、クリスチャン・ディオールの言葉と響き合います。「ファブリックは私たちの夢を運んでくれる唯一の乗り物。また、アイデアの発案者でもあります。ファブリックは、私たちのインスピレーションの出発点にもなります。ドレスは、ファブリックなしでは誕生できないのです*」。

* Je suis couturier(邦題:私は流行を作る)』、クリスチャン・ディオール著、Éditions du Conquistador1951年。

ファブリックは私たちの夢を運んでくれる唯一の乗り物。また、アイデアの発案者でもあります」

クリスチャン・ディオール

数世紀にわたって富と権力の象徴として親しまれてきた、艶やかな光沢を湛え、高級感漂うベルベット。織り目に対して直立した糸の層を形成することで、ベルベットの特徴である高密度の短いパイルで構成された表面が生み出されます。ベルベットは特殊な技術を用いて織られる生地で、上下2の基布をつなぎ合わせるように織ることで基布間にパイルを作り、そのパイル部分を上と下で切り分けることで、ふわふわした滑らかな質感を生み出します。その後、ブラシをかけたり、カットしたり、熱圧加工を施したりすることで、浮き彫り模様や幾何学模様を表現することができます。

このベルベットの驚くべきバリエーションであるベルベット ジャカードは、プリントや刺繍ではなく、生地の構造に直接織り込まれた複雑なモチーフが特徴。ベルベット ジャカードは、ベルベット織りと、19世紀初頭にフランスの発明家ジョゼフ=マリー・ジャカールによって考案されたジャカード織りの巧妙な組み合わせから誕生しました。今回のコレクションで、マリア・グラツィア・キウリは、このベルベット ジャカードに無数の小さな花のモチーフを施しました。アンティークの要素にシンプルかつモダンなラインを融合させた、脱構築的でありながら、無限のロマンティシズムを湛えたデザイン。ジャケットやコート、アンサンブルなどに用いられたこの独創的なデザインは、それぞれのルックに優雅なタッチと個性的なオーラを与えました。

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職人にとっての挑戦は、非常に古い手法を用いて現代的な生地を生み出すこと。それは、メゾンが大切にする「ディテールの美学」に導かれた、時代を超えた大胆な試みです。今回のベルベット ジャカードは、シルクのみを用いて、1950年代製の全長約5メートルの織機で織られました。まず、織機の内部に、1,800もの糸のコーンが手作業で組み立てられ、取り付けられます。その後、織機は、まるで魅惑的なバレエを踊るかのように、経糸でパイルを生み出すベルベット織りの工程を繰り広げます。織機に設置された複数の棒とナイフを順に使用しながら糸を切り、滑らかな、あるいはループ状の仕上げを施します。

やかでエレガントかつ機能的な素材を創造するに至った技術力の高さが光る、真のイノベーションの傑作です。「今こそ、誘惑に耐え、その美しさゆえに使いにくい魅力的な生地の罠に陥らないことが重要です。やがて、気づかないうちに不要なものが排除され、選択が絞り込まれ、生地について考えるうちに自然とドレスのイメージが浮かび上がってくるのです」と、自著『Je suis couturier(邦題:私は流行をつくる)』の中で語ったムッシュ ディオール。このビジョンを共有するマリア・グラツィア・キウリは、美と機能性を融合させたいという自身の願いを改めて示しました。過去、現在、未来が交わる場所で再解釈された、ディオールならではのベルベット ジャカードは、自由と解放を求める世代の理想を表現する新たなファッションの象徴となりました。まさにファブリックが言語となったのです。

Culture - NEWS SAVOIR FAIRE
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© Melinda Triana

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