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© VALENTIN HENNEQUIN

A work in gold for j’adore

ジャドールの真髄、ゴールド

世界中の著名な美術館に巨大なインスタレーション作品を展示するジャン=ミシェル・オトニエルが、フランシス・クルジャンの創作した新フレグランス「ジャドール ロー」にインスパイアされた100個限定の作品* を制作。フレグランスのアートを讃える、壮麗な作品を生み出したフランス人アーティストへの独占インタビューです。
BY MARIE AUDRAN

マリー・オードラン(以下MA):フランシス・クルジャンが創作した「ジャドール ロー」に贈るオマージュ作品。そのインスピレーションの源は?

ジャン=ミシェル・オトニエル(以下JMO):私の創作の核となっているのは、花の世界と植物への情熱です。愛と再生の象徴でもあるローズは、ルーヴル美術館での作品ですでにオマージュを捧げましたが、ジャドールのフレグランスにおいても存在感を放っています。ローズは建築的な構造をした花でもあり、今回ジャドールのために創作した作品のインスピレーションにもなりました。ディオールとのコラボレーションにより、私の作品がより多くの人々の目に触れることになりますが、こうした探求は、ブルックリン植物園にて公開された巨大な彫刻作品「ゴールド ローズ」にもつながりました。

* まるで芸術品のようなホワイトゴールドのラグジュアリーな限定エディション。日本での発売等、詳細につきましてはカスタマーサービス(03-3239-0618)までお問い合わせください。
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 © Valentin Hennequin

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 © Valentin Hennequin

MA:あなたの考え方は、ムッシュ ディオールによる「儚い建築物」としてのクチュールという考え方と結びついていますね。アイコニックな「ニュールック」となったディオール初のライン「オン・ユイット(8)」と「コロール(花冠)」はまるで、ボトルを包み込む花冠と8の字のフォルムのボトル、ひとつの作品として融合しているようにも感じます。

JMO:私の彫刻作品に共通する「インフィニティ(無限大)」の記号は、数字の8と同じ曲線を描きます。まるでネックレスのように、はじまりも終わりもないフォルムです。ローズはここで、無限の魅力を放ち、可能性を秘めた “融合” を描き、パールはエネルギーの軌跡を辿ります。彫刻の中心には、まるで無重力の空間に浮いているかのようなクリスタルのボトルがあります。それは、花びらを包み込む花冠に滴るゴールドの雫を彷彿とさせます。ローズとボトルは調和し、美しい曲線美を描きます。ジャドールの歴史は、時代を追うごとに変化するフェミニニティへのオマージュを語り継いでいます。今回のアートプロジェクトにおいて花冠が象徴するのは、自由な女性。ゆらゆらと揺れるボトルのように、花冠は女性の自由そのものです。花を摘むように手に取ると、そこに命が宿ります。底が丸みを帯びているため固定されることなく、まるで躍動する現代のフェミニニティのように、自分だけのパワーを宿しているのです。「ファム オブジェ(オブジェとしての女性)」のイメージからはほど遠いですね。また、大切に愛でるタリスマン(お守り)としても肌につけることができます。

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 © Valentin Hennequin

MA:ジャン・コクトーは、友人であるクリスチャン・ディオールのことを「神(dieu)とゴールド(or)を組み合わせた夢のような名を持つ俊敏な天才」と表現しています。ジャドールに輝きを与えるディオールの永遠のコード、ゴールドは、あなたにとって何を意味していますか。

JMO:私にとってのゴールドは、「単なる色」以上の意味を持っています。本質的で地球に存在する、自然からもたらされる資源でもあります。私が創作のなかで蘇らせようとしているのは、ゴールドが変容を遂げる魔法、つまり、神の領域と言っても過言ではないその起源において、人間を凌駕する宇宙との神聖な絆なのです。太古よりゴールドは、アフリカやヨーロッパ、アメリカ、エジプト、中国といったあらゆる文化で重宝され、人々を魅了してきました。その普遍性から、ゴールドは他に類をみない物質と言えます。ゴールドにこの唯一無二のパワーを再び宿すこと、これがディオールとのコラボレーションの核となっています。

MA:今回の作品を経て昇華された素材は、他にもありますか。

JMO:今回の作品は、ブロンズ製の彫刻をゴールドにくぐらせました。また、カミーユ・クローデルやロダンといった偉大な彫刻家が使っていた「ロストワックス製法」による鋳造技術も使用しました。そうすることで、ブロンズ彫刻へと姿を変え、ワックスの彫刻は溶けてなくなります。今回の作品もこうして誕生しました。ブロンズもまた、ゴールドのように変容する物質です。ワックスの細かな痕跡をしっかりと残す、素晴らしい能力を持っています。この彫刻を、フレグランスを内包する、いわば “パールの巣” のように表現することが私にとって重要な課題でした。重鎮なブロンズのおかげで、クリスタル独自の透明感あふれるボトルがそうであるように、素材の美しさと力強さが際立つのです。

MA:ここに集大成されたサヴォワールフェールは、まさにオートクチュールに求められる、手仕事のポエジーに呼応していますね。ディオールの「プティットマン(お針子)」たちを讃えることも重要でしたか?

JMO:アーティストとしての私の創作はすべて、ガラス職人や鋳物職人、金属加工職人といった、熟練のクラフツマンとのコラボレーションを通じて進められています。それは、楽譜を書いて演奏を行う指揮者や作曲家が、最高峰のミュージシャンの伴奏を選ぶのによく似ています。いわば、卓越の限界を超えるための、サヴォワールフェールのコンサート、クラフツマンシップの賛歌、といったところでしょうか。本作品では、ゴールドの煌めく光は、普遍的に人々を捉えて離さない “精神性” を表現しています。ゴールドの雫や一筋の陽光を宿すようなフレグランスの神聖さ。誰しも心に抱く、子供が持つ純粋な感動に似た眩しさ。そんな穢れのない感動を表現したいと願いました。

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「ゴールドにこの唯一無二のパワーを再び宿すこと、これがディオールとのコラボレーションの核となっています」

ジャン=ミシェル・オトニエル

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 © Valentin Hennequin

MA:ジャドールの世界を再解釈するのは、これが初めての事ではないですね。

JMO:10年前、ムラーノ島(ベネチア)のガラス工房とともに、ディオールの限定エディションのフレグランス ボトルを作ったのが、ディオールとの初めてのコラボレーションでした。普遍的なオーラ放つジャドールは、世界中で感動的なほど愛され続けています。韓国からアフリカまで、ジャドールが話題にならない場所はありません。花々のパワーを表現し、祝福を捧げるこのフレグランスに、誰もが夢中になるのです。これがジャドールの美しさでもあると言えるでしょう。自然の美しさを映し出しながら、同時に幻想の中へと誘うからです。私を常に夢中にさせるのも、このフレグランスの持つ二重の神聖な次元なのです。

MA:あなたが持つフレグランスのビジョンとは?

JMO:フレグランスは、時を戻し再び記憶を呼び起こすような魅惑の存在。私たちはフレグランスを “纏う” のですが、私が創作した彫刻も、ボトルを “纏う” ようなイメージや、一体感や絆、愛というイメージで創り上げました。一人ひとりに寄り添って変化するフレグランス、感情を見出し再び感じるために向き合う、いわば生きたアート作品でもあるフレグランスを、誇りを持って纏うのです。芸術作品を鑑賞するために美術館に足を運ぶのと同じ。例えば『モナリザ』が私たちに語りかけてくるものは、人生のどのタイミングで見るかによっても異なります。嗅覚の記憶が想起させる感情も、私たちの気分や出逢い、訪れた場所 ― スペインのアンダルシア地方のオレンジ畑や、南仏グラースのバラ畑 ― によっても同じように変化します。全てがバーチャルに傾倒している今という時代だからこそ、“リアル” と “感覚” の体験をもたらしてくれるアートとフレグランスは、そういう意味でもとても大切な存在なのです。

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クリスチャン・ディオールのスケッチがドレスに命を吹き込んだように、ジャン=ミシェル・オトニエルのデッサンから誕生した「ゴールド ローズ」の巨大彫刻は、「ジャドール ロー」の限定エディションにインスパイアされました。

「私の創作のはじまりには常に、紙の上に描かれた夢のような水彩画のデッサンがあります。次に、デッサンを解釈し彫刻作品を生み出す宝石職人や建築家を選びます。3.1mの高さを持つ『ゴールド ローズ』がそうであったように、巨大サイズの作品もあります。パールは手作業で形成され、金箔が貼られました。『ジャドール ロー』へのオマージュ『ゴールド ローズ』は、ブルックリン植物園で開催の個展『The Flowers of Hypnosis』で紹介されました。これはパリのプティ パレでスタートした『ディオール カルチャー ガーデン』の一環で、ディオールと私のコラボレーションのひとつとなりました。2023年7月18日にニューヨークで開幕した本個展は、ディオールが主催する対話的イベントの第3弾であり、同時に最後の寄港地となったのです。ディオールは、アートコレクターであり、アートギャラリーのオーナーでもあったクリスチャン・ディオールの芸術への情熱の延長線上で、アーティストが必要とする完全なる自由を与えながら支援を行うという、素晴らしい活動を行っています」

ジャン=ミシェル・オトニエル

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