Miss Dior: 
The inspiration

「ミス ディオール」、インスピレーション

「ニュールック」が大成功を収めたショーが開催された1947年、マニフェスト的存在として誕生した、ディオール初のフレグランス「ミス ディオール1」。今年、616日から715日まで東京の六本木ミュージアムで開催された「ミス ディオール展覧会 ある女性の物語」では、ピンクのリボンが紡ぐ壮大な物語が展開されました。

MISS DIOR HOUSE
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© Daniel Darmon © INFAS

アート、クチュール、フレグランスが織り成す魅惑あふれる世界。回顧展「ミス ディオール展覧会 ある女性の物語」は、花々が豊かに香るフレグランスのごとくいくつものコードで構成され、アイコニックなフレグランス「ミス ディオール」の奥深さを体現(「ミス ディオール」はドレスの名前にもなっています)。光り輝くプロヴァンスの風景のように、ハートノートにはもちろん、クリスチャン・ディオールと芸術の世界との情熱的な愛が込められています。この伝説のフレグランス「ミス ディオール」は、数多くのアーティストによって解釈・表現されてきました。その筆頭がルネ・グリュオーで、彼は30年に渡り、一目で彼の作品とわかる筆致で華々しいキャンペーンを展開しました。幾度も変容を遂げ、特に素晴らしいインスピレーションを持つ女性アーティストたちによって何度も表現されてきた永遠のミューズ「ミス ディオール」。本展は、70年以上に渡り「ミス ディオール」に宿る美のディオール スピリットを再発見し、探求する機会となりました。

会場では、「ミス ディオール」を象徴するリボンが、アリアドネの糸 のようにディオール ルック、アーカイブ資料、ブリジット・ニーダーマイヤーの写真やオランダ人デザイナー、サビーヌ・マルセリスの彫刻などの現代アート作品の間を縫うように進んでいきます。ディオールのエクセレンスを体現したこのクチュールリボンは、クチュリエであり創設者であるムッシュ ディオールが「最も優しい色2」と称したピンクの繊細なトーンで彩られた、夢のような装飾の中で来場者を導きます。1949年にクリスチャン・ディオールが「トロンプルイユ」ラインのために制作したドレスから、ナタリー・ポートマンが着用したまばゆいばかりの6着のドレスまで、「ミス ディオール」のオートクチュール ドレスは、優しくも力強い記憶を呼び起こします。

1 このアイコニックなフレグランスは、クチュリエであり創設者であるクリスチャン・ディオールの妹、カトリーヌ・ディオールに捧げるオマージュとして誕生。カトリーヌは、ミッツァ・ブリカールからミス ディオール という愛称で呼ばれました。

2 『ファッション小辞典』(クリスチャン・ディオール著、Cassell & Company、ロンドン、1954年)より。2007年に、ディオールのカタログ『60 années hautes en couleurs(色彩豊かな60年)』の付録としてフランス語に翻訳されました。

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© Daici Ano

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© Daici Ano

今回でディオールとのコラボレーションが4度目となる建築家の重松象平(国際的建築設計事務所OMAのパートナー)が空間デザインを手掛けた、独創性あふれる本展では、有機的なフォルムとボリュームを用いて、日本文化とディオールのエレガンスが見事に融合されました。

日出ずる国 日本に対するムッシュ ディオールの情熱に共鳴し、「ミス ディオール」の魅惑的で常に再解釈されるストーリーは、「ディオール レディ アート」プロジェクトや「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展でメゾンと協働した経験を持つ荒神明香や井田幸昌といった日本人アーティストたちによる卓越の作品を通して語られます。大きな鏡にプリントされた高木由利子が撮影した2枚の写真は、陰影とぼかしの妖艶な効果を生み出し、ディオール スタイルを無限のポエジーで讃えます。そして、最後のサプライズとして、江上越による色鮮やかな作品『Rainbow』がこの特別な旅物語に彩りを添えます。

文化と自然への魅惑が交差するこのスリリングな冒険は、エヴァ・ジョスパンがデザインした、ヴァージニア・ウルフに贈る頌歌ともいえる『シルクの部屋』へと続き、ここでは彼女による「ミス ディオール パルファン(限定エディション)」が豪華なジュエリーのように姿を現します。本展では、貴重で特別な対話を通じて、女性のエンパワーメントが輝きを放ち、「ミス ディオール」本来のオーラが呼び覚まされました。

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© Daici Ano

ディオールと日本:抗いがたい魅力

アヴァンギャルド、そして伝統への嗜好を日本と共有するメゾンは、常に日本と真摯な絆を紡いできました。幼少期より日本に魅了されたクリスチャン・ディオールは、デザインを通して絶えず日本への憧れを表現し、日本と独自の関係を築きます。彼がシーズン毎に発表した「ジャルダン ジャポネ(日本庭園)」「ウタマロ(歌麿)」「トウキョウ」「ラショウモン(羅生門)」と名付けられたルックには、日本の影響が見て取れます。そして、この情熱は、マルク・ボアンからマリア・グラツィア・キウリやキム・ジョーンズに至るまで、さまざまな後継者たちにも受け継がれます。また、日本への揺るぎない思いは、1999年に神戸ファッション美術館で開催された日本国内初のディオール展「Dior/ジョン・ガリアーノと安藤忠雄の世界」や、202212月から20235月まで東京都現代美術館(MOT)で開催された回顧展「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」など、前例のないイベントを通じても表現された、まさに永遠の夢の逃避行です。

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© Daici Ano

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