_DSC5256

MARCELINA SANTIAGO GONZÁLEZ, FRANCISCA GONZÁLEZ GARCÍA, IRMA SILVA VÁSQUEZ, ISABEL GONZÁLEZ SILVA, VICTORIA SANTIAGO GARCÍA © XIMENA DEL VALLE

The thread of
excellence

卓越の糸にのせて

メキシコで開催された2024年クルーズ コレクションは、メキシコのクラフツマンシップの豊かさに贈る賛歌。ヘリテージと再解釈の狭間に息づく卓越のサヴォワールフェールが、めくるめくメキシコの伝統技術を体現します。その文化からクチュールまで、アトリエ「ロシナンテ」の全貌に迫ります。
BY LUCIE ALEXANDRE

_DSC5179

ディオール ピース© XIMENA DEL VALLE

深い自然の残るオアハカ州の丘の上で、さまざまな世代がひとつの場所に集まって刺繍にいそしむ「雨の村の住人」の女性たち。類を見ないようなシンクロしたリズムを奏でながら、自分たちの作品の縫い目の数を、時には声に出しながら数え続けます。縫い目は正確に、過不足なく、適切な数で縫い進められ、ほとんど感覚的に同じサイズの正方形の数々が形成されます。自然の風景そのものが彼女たちのアトリエであり、振付のような仕草とともに歩き回りながら刺繍を進める姿は、コミュニティのパワーや所作の美学を今に伝えます。コレクティブな形で感受され、経験される “リズム” は、彼女たちの紡ぐアートに必要不可欠な要素のひとつ。精緻でプレシャスな “針のダンス” は、サヴォワールフェールの優れた技巧を体現していると言えます。
SF_PEPENADO_TECHNIQUE_1MIN_169_LOGO copy.mp4.00_00_26_24.Still002
 / 
00:00
SF_PEPENADO_TECHNIQUE_1MIN_169_LOGO copy.mp4.00_00_26_24.Still002
 / 
00:00

 © Urdimbre Audiovisual

「私にとって刺繍とは、纏われたファブリックを通じて考え方や人生の捉え方を表現し体現する方法であり、個の対話であり、多様性のベクトルなのです」

ナーシー・アレリ・モラレス

_DSC5277
幾重もの魅力にあふれるこの地域に息づく文化や豊かさに光を当てるべく、スタイリストを母に持つナーシー・アレリ・モラレスは、2012年にアトリエ「ロシナンテ」を創設。その後、地元のさまざまな職人とコラボレーションを果たし、オアハカに伝わる100年以上の歴史を持つ遺産としての刺繡にオマージュを贈り続けています。ナーシー・アレリ・モラレスにとって、そして刺繍のお針子たちにとって、ファブリックは表現方法のひとつ。それはファブリックを「夢を運んでくれる乗り物」と表現したクリスチャン・ディオールの主張に通じます。人生の捉え方を体現する、薄く、繊細なファブリック。伝統的衣装を彩る象徴的なモチーフはこうして、彼女たちを取り巻く風景を表現した魅惑の絵画となり、ファブリックの上に展開するのです。動物柄は胸の位置に、草木の柄は袖に。体の左右両サイドの模様が完璧なシンメトリーとなるよう詳細な注意を払ったデザインです。鳥や植物をはじめとする自然のモチーフが幾何学的なエレメントとなり、卓越のピースに広がります。ひとつひとつのクリエイションは、集団的でパーソナルな歴史の一部を想起させ、それを創る人と着る人の眼差しが交差し、融合します。
_DSC5843

IRMA SILVA VÁSQUEZ © XIMENA DEL VALLE

「私にとってメゾン ディオールは、世界とのコネクションに成功したクリエイターの夢を表現しています。本コレクションでディオールと仕事ができたことは、私たち全員にとって、とても特別な時間でした。ディオールの眼差しを通じて、メキシコ南部の小さな村がどんな場所なのかを世界に知ってもらうことができ感謝しています」

ナーシー・アレリ・モラレス

_DSC5783

ディオール ピース© XIMENA DEL VALLE

2024年クルーズ コレクションでナーシー・アレリ・モラレスは、「ペペナド フランシド」の名で知られる刺繍の企画と生産を担当。刺繍はその後、ジャケットやシャツ、スカートの上に鮮やかに花咲きました。これら刺繍は、メキシコのオアハカ州トラスコ郡サン・パブロ・ティハルテペク市のサン・ルーカス・レデンシオン村に位置する、先住民ミシュテカの女性だけが構成するコミュニティにより制作。ここでみられる、他に類をみないクラフツマンシップは、忍耐と繊細さを要する日常的な活動です。「マンタ」と呼ばれるコットンファブリックに刺繍を施すお針子たちは、コットン糸を使い、表と裏の両面のある作品となるよう注意しながら丁寧に刺繍を進めます。ラインを進める毎に縫い目が連なり、ランの花やクローバー、“空の目”、山といった自然のモチーフが製作され、マリア・グラツィア・キウリがデザインしたピースを彩ります。刺繍と同時に手作業によるプリーツが施されることで、ファブリックは比類なきスタイルに仕上がります。伝統の継承、共有、情熱に贈るトリビュートとなりました。
_DSC5895
_DSC5256
_DSC5179
_DSC5277
_DSC5843
_DSC5783
_DSC5895