ジョアナ・ヴァスコンセロス
ポルトガル・リスボンで50人ものスタジオを指揮するのは、壮大な造形物や没入型のインスタレーションで著名なアーティスト。ジョアナ・ヴァスコンセロスは2023-2024年秋冬 コレクションのために、「ワルキューレ ミス ディオール」と命名された華麗なインスタレーションを制作しました。BY MARIE ÉPINEUIL
この作品は、フランス政府からクロワ・ドゥ・ゲール軍事勲章ならびにレジスタンス勲章を授与され、「どんな試練にも揺るがぬ勇気と使命感」を理由に大英帝国勲章も受勲したクリスチャン・ディオールの妹、カトリーヌ・ディオールへのオマージュです。庭園や自然をこよなく愛したカトリーヌは、メゾン初のフレグランスであり、今やメゾンのアイコンである「ミス ディオール」のインスピレーション源にもなりました。ジョアナ・ヴァスコンセロスにとって、カトリーヌ・ディオールは北欧神話の神「ワルキューレ」でした。このアプローチは、コレクションごとにマリア・グラツィア・キウリの作品を彩るフェミニニティとフェミニズムを結ぶ本質的な絆を想起させます。 |
ジョアナ・ヴァスコンセロスの家族もまたディオール家と同様、「クリエイション」と「社会参加」という2つの情熱を育くんでいました。彼女の母親と祖母は画家、父親は武力紛争を取材した偉大な戦場フォトジャーナリストであり、新聞編集者でもありました。一家はサラザール独裁政権を逃れてポルトガルからフランスに政治亡命し、1971年にジョアナが誕生します。1974年のカーネーション革命の後、一家はポルトガルに帰国し、リスボン近郊のリンダ・ア・ヴェーリャ市に定住します。ジョアナは現在も、そこから数キロ離れたテージョ川河口に位置する場所に住まいを構えています。ポルトガルに深く根差した自身のルーツを誇り、きっとポルトガル人でなければ今のようなアーティストになれなかっただろう、としばしば語るジョアナ・ヴァスコンセロスは、デッサンとジュエリーを専攻したフェミニスト。2012年には、女性初かつ最年少でヴェルサイユ宮殿での展覧会を開催したアーティストであり、またビルバオ・グッゲンハイム美術館(スペイン)でポルトガル人女性初の回顧展も開催しています。約30の受賞を果たしたジョアナ・ヴァスコンセロスは、フランス芸術文化勲章「オフィシエ」も受勲。自身の名前を冠した財団を設立し、奨学金の授与、社会活動の支援、すべての人に向けた芸術振興に取り組む、まさに現代の女神戦士「ワルキューレ」と言っても過言ではないでしょう。 |