A Lifetime of
Commitment

人生を通じたコミットメント

1967年にメキシコシティで生まれたマヤ・ゴデッド。カメラを携え、自身の国の女性の生き様を伝える使命を自らに課します。インパクトある写真の中で全てをさらけ出す、暴力と不平等に晒されたメキシコ人女性たち。被写体のみならず、マヤ・ゴデッド自身の解放への道を探ります。
BY BORIS BERGMANN

明るい陽のもとで、道に佇む女性を正面から捉えた写真。なかには女性宅のベッドの上で撮影された、顔を隠したり、暗闇によって顔が見えない写真も。被写体は、老女から、成人女性や未成年。歓びに溢れた女性、哀しみが刻まれた女性。愛を知る女性、過去を愛おしむ女性。見捨てられた女性、反逆的な女性。裸体の女性、服を纏った女性。時には、荼毘に付された女性の姿も。

マヤ・ゴデッドのカメラレンズを通じて、剥き出しの、唯一の真実を明らかにする女性たち。そこには、化粧も、フィルターもありません。メキシコの伝説的な女性フォトグラファー、グラシエラ・イトゥルビデの指導を受け、写真家としてのいろはを学んだマヤ・ゴデッドは、彼女が「脆さの空間」と名付ける場所に自分自身を投影する手法を駆使。

彼女にとってフォトグラフィーとは、政治的な創造であり、活動家的な行為です。その目的は、メキシコ人女性たちの社会的地位を守ること。そのために、フォトグラファーという職業を通じ、メキシコに蔓延する家父長制や不正義に意義を唱え、彼女たちの抱える人生の最も暗い側面に光を当てようと試みながら、自由に向けた戦いを祝福するのです。マヤ・ゴデッドは、犯罪者や顧客に狙われ、不安の犠牲となった売春婦たちが何とか命を繋ごうと懸命に生きるメキシコシティのラ・ソレダド・デ・ラ・メルセド地区でたくさんの夜を明かします。彼女が映し出すのは、そんな女性たちの日常生活や悲劇的な場面だけでなく、喜びや連帯の瞬間。

宗教の道徳的な重みの背景から、「完璧な母親像」「清純な女性」といった聖女のイメージを賛美する母国メキシコで、彼女は、そうした社会が同時に、自分たちを誰も守ってくれないこと、疎外された女性を生み出していることを証明しようとします。

マヤ・ゴデッドの作品のなかで最も著名な『Missing』では、カルテルに拉致された少女たちの失踪と、その家族の悲劇的な結末が描かれています。彼女のフォトグラフィーは、失踪した少女たちに新たな命を与え、少女たちを守らない政府に対し非難の眼差しを向けます。

2011年アルル国際写真フェスティバルでは、別のフォトグラフィーシリーズがセンセーションを巻き起こします。『Land of Witches』のなかで、彼女はメキシコの田舎町へと魔女探しの旅に出ます。ヨーロッパにおける厳しい異端審問で迫害を受け、命からがら逃れてきた女性たちの後継者は、その土地固有の知識を広める役割を担っています。特別な存在とされるこうした女性たちは、村の中で見識を求められるとともに恐れられ、避けられる一方で尊重されるという風に、両義的な位置を占めているのです。

メゾンディオールそしてマリア・グラツィア・キウリと固い絆を育んできたマヤ・ゴデッド。ディオールマガジンにおいて、彼女は、2019年クルーズコレクションにインスピレーションを与えた著名な女性騎士「エスカラムサ」と出逢う旅に出ています。また、2024年クルーズコレクションで行われたパフォーマンスのために、エリナ・ショーヴェの着想したフェミニスト刺繍が際立つホワイトドレスの撮影を行ったのもマヤ・ゴデッドです。ミニマルな背景の中、メキシコの若い女性たちが、両腕に花束を抱えながらカメラレンズを見つめ、やがて全員がモノクロ写真に納まります。衣装だけでなく、エリナ・ショーヴェのメッセージに賛歌を贈る、シンプルでパワフルな方法です。

それぞれの旅路、それぞれの探求において、マヤ・ゴデッドは、女性たちの傍に自身の体と魂を捧げます。同じ悩みや、同じ希望を知るために。体感し、耐え、さらけ出し、自由になるように。そして、フォトグラフィーの力を以て、女性たちを支持し、愛で続けるのです。

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